富山県地方自治研究センター第10回定時会員総会、自治研センター研究会を開催

テーマ 学校教育を本質から問い直す
 ~学校教育のあるべき姿と学校変革のプロセス~
10月3日(土)、センターの定時会員総会に引き続き研究会を開催しました。
講師は、2020年3月まで千代田区立麹町中学校の校長(現在は横浜創英中学・高等学校校長)であった工藤勇一先生をお招きしました。
なお、研究会は「密」を避けるため、広いホールに参加者を限定して行われました。

工藤先生は、つぎの内容で講演されました。
第1章 日本の教育が抱える真の課題
 §1 誰もが当事者意識を失っている
 §2 原因は手段が目的と化している
第2章 当事者意識と対話
 §3 まずは最上位目標を合意する
§4 目標に戻って対話する
§5 横浜創英の目指す教育

以下、工藤先生の講演の一部を紹介します。

工藤先生は、「学校教育を本質から問い直す」として、まず、日本の教育が抱える真の課題は、誰もが当事者意識を失っていることである。それは、例えば、日本財団の「18歳意識調査」にみると、「自分の国に解決したい社会議題がある」との回答は、アメリカ79.4%、インド89.1%などに対して日本は46.4%、「自分で国や社会を変えられると思う」はアメリカ65.7%、インド83.4%に対して日本は18.3%しかない。人は与えられることに慣れていく。手をかければかけるほど、生徒は自律できなくなり、自分がうまくいかないことを誰かのせいにするようになる。自律・主体性を失った子どもたちが増えていく。

麹町中学校では、3年間「勉強しなさい」と言わない。しかし、放任ではない。3つの言葉かけ「どうしたの?」「君はどうしたいの?」「何を支援してほしいの?」こうして自己決定を積み重ねることが大切。

麹町中学校では、定期考査・宿題は廃止、固定担任制の廃止・全員担任制(チーム教育)、服装・頭髪指導を廃止、AI(人工知能)による数学指導を実施。宿題は自律を失わせる象徴的なものである。目的は生きる力、自律した生徒を育成すること。基礎学力を身につけさせることは、手段である。日本の教育は手段が目的化している。

また、デンマークサッカー協会少年指導10カ条を紹介された。その中には、「子どもたちはあなたのモノではない」「アドバイスはしてもあなたの考えを押し付けてはいけない」などがうたわれている。

今回の研究会の内容は2021年1月発行の季刊誌『自治研とやま』に概要を掲載します。